十種神宝 中学国語の基礎・基本

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ハァァァー 話し合いは終わりだ

仮面ライダー(新)」の第一話で、主人公の筑波洋は志度博士によって改造手術を受けます。
手術後、自分がどのようになったのかレクチャーしてくれたのが、カメレオジン先輩です。
人間がバッタ型の怪人に変身するのではなく、怪人が人間の姿に変身しているのだ、というのです。
筑波洋はそこではじめて変身しますが、洗脳はされていませんでした。
それを知ったカメレオジンは

話し合いは終わりだ

と言うと、スカイライダーに襲いかかります。
ガメレオジンは、ただレクチャーしたり、筑波洋の質問に答えていただけですから、話し合いはしていなかったように記憶しています。
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ガメレオジン(『仮面ライダー(スカイライダー)』©石ノ森章太郎東映
  • では、グループでこの問題について話し合ってみましょう。
授業でよく聞く台詞です。
しかし、よくそのグループを観察してみると、わかる子が一方的にレクチャーしていたり、自分の考え等を順番に発表しあっているだけで、結局発言力の高い子の考えにとりあえずまとめてしまったりと、話し合いになっていない場面が多く、まるでガメレオジンのようです。

指導要領の文言からは消えましたがアクティブラーニングという言葉が、問題解決型学習という言葉とともに広まるにつれ、クローズアップされてきたように感じます。
そして、問題解決のためには話し合いが必要で、それがアクティブ・ラーニングだ、という考え方が生まれてきてしまったような気すらします。

本当にそれでいいのでしょうか。

アクティブラーニングは2012年8月中央教育審議会答申では次のように説明されています。
  • 学習者である生徒が受動的となってしまう授業を行うのではなく、能動的に学ぶことができるような授業を行う学習方法。
  • 生徒が能動的に学ぶことによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。
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一方的に講義を受ける受動的な学習に比べれば、話し合いなどのディスカッションは生徒が授業に参加する点で能動的に学ぶ姿は見られるでしょう。

しかし、もともと話し合いというのは、異なる意見を調整し同意を得るための手段です。
利害や意見の異なる者同士が互いに調整しあって答えを出すことが目的の活動なのです。

確かに学活の話し合いは、クラス目標を考えるとか、クラスマッチのチーム分けをどうするかとか、というような問題を解決するためには有効な手段だと思います。

しかし、例えば数学の問題を話し合いで解決しても良いのでしょうか。
 
話し合いとアクティブ・ラーニングとは目的が違うのです。
アクティブラーニングは生徒が能動的に学ぶための手段であり、結論を出すことが目的の話し合いとは違います。

ですから、順番に漫然と自分の意見を発表していたり、成績のよい子の答えを全員の考えを全員の考えにすりかえていたのでは、能動的に学んだとは言えません。

では、どうすればよいのでしょう。

アクティブラーニングの手法はいくつかありますが、
  • Think-Pair-Share(他者の意見と比較をしながら、自分の考えを明確にしたり深めたりしていくのに適している。)
  • ラウンド・ロビンブレインストーミングの簡易版。新しい考えを次々に生み出していくにに適している。)
  • ピア・レスポンス(レポートやプレゼンテーションのアウトラインを他者の目を通して検討する。書き手と読み手の視点を体験するのに適している。)
などが、授業で行われる主なものだと思います。

しかし、ただ単に友だちと対話し、議論すればいいということではないのです。

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例えば理科に、「化学変化と物質の質量」という単元があります。
化学変化で物質の見た目は変わっても、その中に変わらぬ構造や法則が隠されています。
この構造や法則を理解するが一つの目標です。

生徒にとって、目に見える事象との対話だけで解決するのは難しいと思います。
そこで他者の意見や教師のアドバイスを聞く、つまり他者と対話することによって解決に近づくこともあります。
そしていろいろな情報を自分の中で考え合わせ、自分自身と対話していくことによって解決していくものなのではないでしょうか。

安易に知識を与えるのではなく、生徒一人一人が自分の考えを持って、それを対話によって修正していく過程に学びがあるのだと思います。

しかし、既に知識として結論を知っている生徒は、どの学校のどの教室にもいます。そして、それを他人に吹聴したがる生徒もいるかもしれません。

そういう生徒には「なぜそう考えたの?」「どうやって証明したの?」と聞いてあげましょう。(本で読んだり人に聞いたりしたことをそのまま信じるのって、宗教的で非科学的だよね。)
  • どうやったら確かめられると思う?
これを全体に投げ返す方法もあります。

「知っている生徒がいて答えてしまったら終わり」という授業は知識偏重の授業でアウトです。
どのように生徒へ切り返していくかは、教師の技量が問われるところです。

また英語科では、ただ対話活動をやらせればいい、というわけにはいきません。
なぜなら、生徒の学びがアクティブにならないからです。
  • こんな表現を身につけさせるために、どんな活動をさせればよいのだろう
から
  • こんな表現をしたくなるような活動は、どんな活動がベストだろう
と考えて授業を組み立てていくような、発想の転換が必要です。

ジョークのネタになっている “Is this a pen?” “Yes.it's a pen.” という対話とか“I am a boy.”というように、「先に英語表現ありき」という授業が多かったのではないでしょうか。
「そんなの見りゃわかるだろ」「なぜそれを言う?」と突っ込みどころ満載の不自然な文が「先に英語表現ありき」の考え方なのです。

例えば「過去形を使わせる」ために「昨日何を食べましたか」と互いに質問させる授業があります。

生徒は、なぜ昨日食べたものを友達に聞かなくてはいけないのでしょう。また、なぜその質問に律儀に答えなくてはいけないのでしょう。「ノーコメント」ではいけないのでしょうか。

これが「先に英語表現ありき」の授業です。

「過去形を使うために会話する」という考え方の先にあるのがアクティビティ英語を使っての活動・体を使っての遊び)です。
アクティビティは確かに必要な活動だと思います。しかし、決まったパターンを使った活動=アクティビティは、お子様向けの英会話教室で盛んにやっていることであり、AIの最も得意とするところです。

指導要領で目指す、英語科における言語活動の充実とは「昨日食べたおいしかったものを友達に伝えたいから過去形を使う」ように仕向けなさい、ということだと思います。 
実生活で生きてはたらく言葉の力を育てるには、表現しようとする気持ちを誘い、「この表現を使ってみよう」「自分の言いたかったことが言えた」と感じられる授業場面(英語の使用場面)をいかに設定するかが鍵となるのではないかと思います。
 

これからは「伝えたいことが先にある学習活動」を単元や授業に位置づけることを大切になってくるのではないでしょうか。

これはAIにはできないことだと思います。
しかし、使わせたい表現を使いたくなるような授業の場面設定というのは、とても難しいことです。まさに教材研究の力量が問われることになると思います。