「シカの『落ち穂拾い』」3 授業の実際……疑いを持って「検証」を検証しよう
生徒用の資料・解説はこちらのHPに載せてあります。
興味のある方はどうぞご覧下さい。
「シカの『落ち穂拾い』」の学習プリントを作成しました。
興味のある方はこちらへどうぞ。
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第3時 ただしく結論を導いているか
仮説は次の二つです。
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第3時 ただしく結論を導いているか
仮説は次の二つです。
- 一 春は、シカの本来の食物が不足している。
- 二 サルの落とす食物のほうが、栄養価が高い。
この二つの仮説を検証するために、「仮説の検証」の項をもうけています。
前時に、この検証の部分から、考察の結論部は導かれていることはわかりました。
前時に、この検証の部分から、考察の結論部は導かれていることはわかりました。
そこで、学習問題として、次のものを据えます。
〈学習問題〉
〈学習問題〉
- A 仮説を確かめるための方法として、二つの検証は適切なものか。
- B それぞれの検証の内容は正しいのか。
具体的には、次のような学習になります。
〈一について〉
- 「春は、シカ本来の食物が不足している」という仮説を証明するために「イネ科の草の供給量の測定」を行うことは適切か。
- 図2から「春は、シカ本来の食物が不足している時期なのである」と言えるのか。
〈二について〉
- 「サルの落とす食物のほうが、栄養価が高い」という仮説を証明するために「食物の栄養価の分析」を行うことは適切か。
- 表2から「サルの落とす食物は、シカ本来の食物よりも栄養価が高い」と言えるのか。
生徒は「教科書に載っているので正しいに決まっている」という漠然とした考えを持っています。
これは「印刷物になっていれば……」「ネットに載っていれば……」と、際限なく広がり、
自分の頭で考えることを放棄してしまう危険性を帯びています。
これは「印刷物になっていれば……」「ネットに載っていれば……」と、際限なく広がり、
自分の頭で考えることを放棄してしまう危険性を帯びています。
特に、「図表や数値で表現されていればなんとなく正しいような気がする」という意識は払拭してあげたほうが、生徒の将来のためだと思います。
検証の一と二を、いちいち一斉授業の中で取り扱っていると、1時間では収まりません。
そこで、ワークシート等で一人一人にまとめさせ、
それをグループや学級で発表・検証していくアクティブラーニングを行います。
それをグループや学級で発表・検証していくアクティブラーニングを行います。
検証するポイントは以下の通りです。
〈一について〉
○「シカ本来の食物であるイネ科の草」とあるので、
仮説一の「シカ本来の食物」は「イネ科の草」と考えて良い。(ここまで疑うだけの知識はありませんからね。)
○図2から「春は、イネ科の草の供給量が不足している時期」と言っても良いのか。
- 縦軸の数字は何か。→1㎡あたりのイネ科の草の重さ。
- 調査した場所だけたまたま多い、少ないということはないのか。 →「刈り取りは毎月複数の場所で行った。グラフは、月ごとの草の平均値を示したもの」とある。統計的に誤差が出ないように工夫されている。(作為までを疑ったら、あとは自分で確かめるしかできませんからね。)
- イネ科の草の供給量が明らかに不足するのは、12月~4月(あるいは11月~5月)である。これを「春は、イネ科の草の供給量が不足している時期」と言って良いのか。 →イネ科の草の供給量が不足するのは冬から春にかけてである。従って「春は、イネ科の草の供給量が不足する」と言っても間違いとは言えない。
ポイントは、
- について……同じ意味の言葉による言い換え
- について……偶然性の排除=客観性の保障
- について……間違いでないものは正しいというレトリック
特に3は、
図2をしっかり見た生徒は
図2をしっかり見た生徒は
- 「イネ科の草が少なくなるのは春と冬なのに、なぜ春と言っているのだろう」
- 「こういう言い方をして自分が導きたい結論にもっていくことがあるんだよ。この文章に悪意はないと思うけど、世の中にはわざとこういうテクニックを使ってみんなをひっかけようとする人がいるから、気をつけてね。間違ってはいないのだから、ひっかかったら負けだよ。」
〈二について〉
○仮説二とその検証方法は一致しているので、間違いではない。
○「サルの落とす食物は、シカ本来の食物よりも栄養価が高い」という結論は、正しいのか。
- この結論は前文で「『落ち穂拾い』で採食した食物のほうが、一年を通して脂質やたんぱく質、炭水化物などが豊富で、食物にふくまれるエネルギーの量が多い」という表2の解釈をまとめたものである。このまとめは正しいか。
- 「栄養価」とは何か。 →「脂質やたんぱく質、炭水化物など」と「食物にふくまれるエネルギーの量」の二つである。 →どこが違うか。 →片方は「豊富で」とあり、もう片方は「多い」とある。「脂質やたんぱく質、炭水化物」は家庭科で学習する栄養素であり、他にビタミンやミネラルを加えて五大栄養素と呼ぶ。だから「など」と書かれている。一方五大栄養素の中で糖質・脂質・たんぱく質はエネルギー源になる栄養素であり、この三つが多ければ、当然「エネルギーの量」は多くなる。脂質・たんぱく質・炭水化物(糖質の一部)が多ければ、エネルギーの量が多くなって当然である。 →なぜ「栄養素」ではなく「栄養価」としたのか。 →「栄養素」は栄養の種類の豊富さを表現している。種類が豊富であっても微量であれば意味をなさないこともある。(ビタミンやミネラルなどは微量でも大丈夫ですからね。)そこでエネルギーとしての総量を明らかにした。だから「栄養としての価値」という意味で「栄養価」を使ったのだろう。
ポイントは「栄養素」と「エネルギーの量」の言葉の使い分けです。
「栄養価」にはこの二つの意味が含まれていることに気づかせます。
そしてテストでは、記述問題としてこの二つがきちんと区別されているかどうかを見る問題が出題できます。
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そしてテストでは、記述問題としてこの二つがきちんと区別されているかどうかを見る問題が出題できます。
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