十種神宝 中学国語の基礎・基本

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七つの顔の男だぜ

戦後まもなく、「多羅尾伴内シリーズ」と呼ばれる映画が上映されました。
ada56f6d0804e0d8ef632b69376d2111©東映
映画の終盤に、伴内が変装した“謎の男”を前にして、犯罪一味のボスが「貴様は誰だ!?」と問います。

  • 七つの顔の男じゃよ。ある時は競馬師、ある時は私立探偵、ある時は画家、またある時は片目の運転手、ある時はインドの魔術師、またある時は老警官。しかしてその実体は……!
この名台詞で物語を大団円に導くのがお決まりのパターンでした。

多羅尾伴内ほどではありませんが、教師の五者と言って、学者、医者…と、教師の仕事を幾つかの他業種の能力をもっていないといけない、という有り難いお話があります。

その五つは何か、定説はないようです。
以下に代表的な「者」と、その意味を挙げます。
  
  • 学者 自分の専門分野に通じていなくてはならない。
  • 医者 朝の学活で子どもの顔色を見て健康状態を把握できなくてはならない。健康状態に限らず、生徒の現状を正確に診断・治療しなくてはならない。
  • 易者 子どもの個性をつかみ、将来の適性を見抜き、指導に生かせなくてはならない。テストや入試問題を的確に予想し、それを授業に生かせなくてはならない。
  • 役者 子どもを惹きつけ、楽しい授業を展開できなくてはならない。他の職業の顔を演じ分け、楽しい授業を展開できなくてはならない。
  • 芸者 一芸は百芸に通ず。教師自身が一芸に秀でた芸者でなくてはならない。子どもの気持ちを持ち上げ、気分良く勉強に向かわせなくてはならない。
  • 記者 正々堂々、自身と責任を持って指導しなくてはならない。
  • 牧者 羊飼いの意味。牧人とも言う。迷える子羊を教導しなくてはならない。
世の中に「ケラ才」という言葉があります。
『故事俗字ことわざ大辞典』尚学図書小学館 S57)によれば
  • ケラは飛ぶ、よじ登る、泳ぐ、土を掘る、走るという五つの能力を持っているが、どれも巧みでないことから、多芸多才ではあるが、どれ一つとして物になるものがないこと、また、役に立たない才能を例えて言う。
という意味です。
25180_01©東京ズーネット
私たちは、学者としても医者としても、大学教授や医学博士にはかないません。
易者といっても街角に立って金を稼ぐことすらできません。
老け役を演ずるために前歯を全部抜いた某女優ほどの役者根性もないし、
芸者のように芸を売ることはもちろん「体は売っても魂は売りんせん」という花魁の気概すら怪しいものです。
新聞記者のように社会や権力に媚びずに生きることは公務員としては不可能ですし、
ルロイ修道士(3年国語『握手』に登場する立派な修道士さんです)のような牧者とはほど遠い存在です。
  
教職は総合職であり専門職です。そして教職の根底にあるものは何者(なんじゃ?……ここ笑うところです)

たまには考えてみるのも、悪くないと思います。

 そして…何よりも、「達者」がすべての分母です。
 くれぐれも、体が資本の商売ですよ。