教室は たとえていえば 地雷原 ３

『仮面ライダーストロンガー』の後期の敵はデルザー軍団でした。

©東映／石ノ森章太郎

メンバーが全員台幹部級の実力者で、「ストロンガーを倒した者がリーダーとなる」というルールの下、完全な実力主義を掲げていました。
ところが各自のプライドの高さと相まって、協調性・結束力が皆無で、共同戦線を組むことはほとんどなく、味方を妨害したり、時には謀殺を図るなど激しい内部抗争を繰り広げていました。

スクールカーストも同じです。

生徒たちは、互いのコミュニケーションの中で自分のポジションを探り合っています。（探しているのではありません。）
その結果、スクールカーストはいじめの温床となる可能性があります。

生徒にとってコミュニケーション能力≒人気獲得力であり、お笑い芸人のように、自分の実際の性格だけではなく、場の空気による暗黙の圧力で配分される「キャラ」を演じあっている（キャラ戦争　荻上チキ 2008）という説もあります。

それほどひどくなくても、学級内の自分の位置の確保は、生徒にとってとても大切なことなのです。

カースト内では、いじめの加害者（被害者）になることによってカーストが上昇（下降）するという忌まわしい側面があります。

ウィキベディアには、次のように説明されています。

• 特にもともと多くの生徒が内心では嫌っていた相手に対して先陣を切っていじめを始めた場合などは人気の獲得によってカーストが上昇する。他方、加害者側と同等以上にカーストの高い別の生徒あるいは教師などの介入によってクラスのモラルが回復した場合（いじめが恥ずべき行為であるとの意識が共有された場合）、いじめ加害者のカーストが下降することもある。
• 　中立者（いじめの直接的な加害者でも被害者でもない人）が被害者の救済を試みた場合、成功すればヒーローとしてカーストの上昇が期待できるが、失敗した場合はカーストの下降の危険性（さらにそれと付随して次は自分がいじめの新たな対象となる可能性）がある。（傍線筆者）

実際の教室では、次のようなことが言えます。

• いじめは、上位者が下位者に対して行う。
• 上位グループが複数存在した場合、自分のグループの優位性を保つためにいじめが発生することがある。
• 上位グループの取り巻きの中での序列争いのためにいじめが発生することがある。
• グループを形成する過程で、グループの構成員を増やすためにいじめを行うことがある。

例えば、ＡさんがBさんやCさんに「Dさんってうざいよね」と話しかけたとします。

話しかけることができる＝コミュニケーション能力の高さの証明です。

BさんやCさんは「人間関係に波風をたてない」というコミュニケーション能力（？）が高いため、Ａさんに同調してしまいます。（むしろ「そんなことないよ」「そういうこと言っちゃだめだよ」ということは稀でしょう。Ａさんだって、自分が否定される可能性が低い相手に話しているのですから…。）

Dさんが優等生キャラでみんなから煙たがられていれば、Ａさんが話しかけた効果は抜群でしょう。

その結果「Dさんはうざい」という共通認識を持つグループが形成され、Dさんより上位のＡさんを頂点としたグループが形成されます。

そして更に、BさんやCさんたちは、グループの中の序列を高めるためにDさんに対するいじめをエスカレートさせていきます。

この場合、ターゲットはたまたまDさんが選ばれただけで、自分たちが優位を保てる相手なら誰でもよかったのです。
ですから、ここで「そういうよとはやめようよ」と言った場合、今度は自分がターゲットになってしまいます。

またDさんに対するいじめが解消した場合も、今度はグループの構成員の誰か、あるいはAさん自身が次のいじめのターゲットとして選ばれるかもしれません。

今の中学生は、多かれ少なかれ、そういう環境の中で生活することを余儀なくされています。　
まさに教室は地雷原ですね。

グループを形成し、グループの内外の序列によって安定を得たいという気持ちは悪いことではありません。
だいたい、今の世界の情勢だってそうですし、大人の世界って基本的にそういうものでしょう？
　
問題は、他者を攻撃することにより、自分が優位に立とうとする、という認識です。

　（こんな国、最近聞いたことあるような気がしますね。）