教室は たとえていえば 地雷原 ４

仮面ライダーは、ショッカーに改造され強い力を得ました。

そして、仮面ライダーが戦う相手は、自分と同じようにショッカーに改造された怪人です。
仮面ライダーは、いってみれば元同僚を倒すための存在……「同族殺し」なのです。

もう二度と元に戻れない改造人間としての悲しみ、自分と同じ境遇の者を殺さなければいけない悲しみ
、この悲しみ故に、ライダーたちの仮面には涙のあと（涙のライン）がある、と言われています。

©石森プロ／東映

私たちも、いじめをする生徒と同じ気持ちがないとは言えません。
職員室の中にだってヒエラルキーがあり、いじめがある学校もあります。

私たちはすべて、自分の居場所を求める者の「業」を背負っているのです。

しかし他人の自由を奪おうとする者に対しては、涙を流しながらもライダーキックをお見舞いしなくてはいけません。

それが「人間の自由のために戦う」仮面ライダーとしての教師の役割です。

私たちがすべきことは、まず、クラスのモラルを回復することです。
そして、「いじめは恥ずべき行為である」ことをクラス全体に知らしめることが必要です。

これが有効に機能すれば、いじめをした者はクラス内での地位は確実に下がるはずです。
スクールカーストを上げるためにいじめをした者にとって、死ぬほどつらい結末が待っているのです。

ですから、「だって～」とか「でも～」とか理屈をつけて、彼らは自分の正当性を主張すると思います。
しかし許すことはできません。
なぜならいじめられている子の自由を奪ったのですから。

具体的には以下の内容を告げます。
これは、生徒指導マニュアル等で年度当初申し合わせのある事項だと思います。

• いじめは許される行為ではない。いじめた側の生徒は、具体的事実を保護者に通告し、生徒指導事案となる。これは学校体制としての決定事項である。名前は公表しないが、クラスの他の人たちがそれをまったく気づかないとは思えない。クラスの他の人たちはそんなあなたを見てどう思うか。

　この通告は、あなたのカーストは決定的に下降し、場合によってはあなたがいじめの対象となる場合もある、ということの宣言です。

言い方はいろいろあると思います。ケースバイケースですね。
脅しともとれますが、これを脅しで終わらせてはいけません。

いじめが発覚した段階で、担任はそれを隠さず、年度当初の申し合わせのとおりに粛々と処理（処分）しましょう。
……必ず実行しましょう。そうしないと生徒になめられ、逆効果になります。

これは、教師がスクールカーストの外にいるからこそできることです。

前回のＡさんの例では、このように手を下す以前に、Ａさんとその取り巻き連中を切り離すという方法も実行しておきます。

• （Ａさんに対しては）そんなこと触れ回っていたら、それを見ていた他の人はどう思うかな。
• （取り巻きに対しては）そんなことを聞いて否定しなかったら、それを見ていた他の人はどう思うかな。

結局、彼らが恐れるのは、カースト内の地位が低下することです。
彼らは、地位の低下がいじめの対象となる可能性が高くなることを知っています。
そして、一度低下した地位は、よほどのことがない限り回復はしないことも知っています。

これを利用して、デルザー軍団のようなグループの崩壊を誘うのです。
「他人を殺して、自分は生きる」という考えを持つと結果的にどうなるか思い知らせ、徹底的につぶしてやりましょう。

他にもいろいろな方法があると思います。
生徒指導主任や学年主任と相談しながら、対応していきましょう。

人間の自由を守る者、カーストの超越者として、いじめを断罪するのが私たちの仕事なのです。

しかし同時に、いじめる側の生徒たちも、自分と同じで、居場所を求めてあがいている哀しい存在なのだ、という、仮面ライダーの涙のラインを決して忘れてはいけません。