十種神宝 中学国語の基礎・基本

                           右下の検索で、教材名を入力してください。                           このブログで紹介した教材の学習プリントを販売します。 毎日の予習・復習や、定期テスト対策に使えるプリントです。 興味のある方はこちらをご覧下さい。https://kandakara.booth.pm/

あなたの教室が目指すもの……ユートピアか桃源郷か

 教師たるもの、だれしも自分の教室(学級や授業)に理想を求めてやみません。では、その理想を生徒の気持ちとしてとらえると、どのようなものになるのでしょう。

 「ユートピア」と「桃源郷」があります。ともに理想郷を指す言葉ですが、その内実は大きく違うようです。
Utopia
 「ユートピア」は、もともと16世紀頃のイギリスの思想家トマス・モアが書いた本の題名で、物語中に登場する架空の国の名前です。

 一方「桃源郷」は、4世紀頃の中国の詩人陶淵明が著した散文『桃花源記』に記されています。
200px-明仇英桃源仙境圖
 この二つの理想郷は、住民はみな清潔な衣装を着け、財産を私有せず、必要なものがあるときには共同の倉庫のものを使う等、見かけは重なるところがたくさんあります。

 しかし食事一つをとっても、ユートピアではラッパによって食事の時間が知らされ、(確かに栄養価が高くおいしいものなのですが)決められたものを食べるのみです。
 一方桃源郷では、空腹になればそこらへんにあるもの(他人の家に置いてあるものでもなんでも)を自由に食べます。

 ユートピアは、人工的で規則正しく、徹頭徹尾合理的な国として描かれているのに対して、桃源郷は、自然発生的で迷路的、混沌としている存在のです。いかにもユートピアは西洋的で、桃源郷は東洋的という感想を受けます。

 どちらにも良い点があり、どちらにも悪い点があります。そしてどちらも、現実の学級経営や教科の授業の目指す一つの形ではあると思います。

 理想を求めることは結構ですが、それがどんな中身なのか、しっかり書き出してみる(言語化し、認識する)必要があるのではないでしょうか。

 今までの授業を振り返ってみると、教師の考えた「学習問題」「学習課題」を生徒に命じ、教師が与えた食事しかとることを許さない、「ユートピア」を目指している授業が多かったような気がします。
 (わたしは、鼓腹撃壌*1)を目指していたのですが、なかなかうまくいきませんでした。)

 そして……見かけだけでなく共通していることがもう一つあります。それは、ともに理想が完成されたところであるが故に「歴史」が止まっていて、変化がそれ以上起こらないということです。

 私たちはどんな授業を目指したらよいのでしょう。他の先生の授業を参観し、私たちは、何を取り入れ、何を変化させたらよいのでしょう。
 自分の教科に限らず、互いに授業を見合ったり、いろいろな先輩の授業を見せていただいて、自分自身が変化する契機にできるとよいですね。

  *1) 鼓腹撃壌
  古代中国の聖天使の尭帝は、世の中がうまく治まっているか気になり町の様子を見に行った。人々は帝を称える歌を歌っていた。尭は「誰かがこれを歌わせているのではないか」と不安になった。更に歩いて行くと、一人の老人が満腹になった腹を打ち鳴らし(鼓腹)、地面を踏んで拍子をとり(撃壌)ながら、世の中は平和で天子はいてもいなくても変わらないという意味の歌を歌っていた。尭は、人民が政治を行う者の力を意識せずに、満ち足りた生活が出来ていることが分かり、安心したという故事。



教師教育ランキング