十種神宝 中学国語の基礎・基本

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仮面ライダーは正義の味方ではない……ライダーキックは「自由」のために

 生徒指導で、何が良くて、何が悪いのか迷うことがあります。
 「いじめ」だったら話は簡単ですが、
 生徒同士のいざこざの場合、
 どちらが悪いのか、何が正義なのか、単純には判断できないことが多いと思います。

 そんな時は、ウルトラマンではなく、仮面ライダーになりましょう。
ダウンロード (1) - コピー©石ノ森章太郎東映
 仮面ライダー本郷猛は改造人間である。
 彼を改造したショッカーは世界制覇を企む悪の秘密結社である。
 仮面ライダーは人間の自由のためにショッカーと戦うのだ!

 これは、「仮面ライダー」(仮面ライダー1号、2号です)のオープニングナレーションです。
 このナレーションには「正義の味方」という言葉が使われていません。
 ここにはは、プロデューサーの平山亨やそのスタッフたちの信念が込められています。

   正義という言葉だけは使いたくなかった。
 ヒトラーみたいな独裁者だって「正義」を唱える。

 人々が平和な暮らしを送るために、たくさんの「自由」があります。

 自由に物事を考え表現すること(精神の自由)や、
 正当な理由なく身体を拘束されないこと(人身の自由)、
 職業選択や住む場所などをに選ぶこと(居住・移転の自由)、
 金銭や土地などの財産を保持すること(財産権の保障)などです。

 これらは、憲法及び民法によって、他人の自由を阻害しない限り*1)保障されています。

 仮面ライダーは、この「自由」を奪う者と戦うという位置づけでした。
 そして当時のスタッフたちのこだわり*2)でもありました。

 この主張は、平成ライダーになり、一層はっきりしてきます。

 平成最初のライダーたち(クウガ・アギト・龍騎)は「乱立する小さな正義とその調停」がテーマでした*3)。

 何が正義で何が悪か、立場が違えば正義も悪に、悪も正義になる時代のライダーたちが戦う理由は、「正義」のためではありません。

 人々の「自由」のために戦う、というスタンスをはっきりと打ち出してきたのだと思います。

 私たちが学級経営上の問題……特に生徒同士のトラブルがあった場合、ウルトラマンのように単純に「正義の味方」として裁定を下すことが難しい場面があると思います。
 「いじめ」の問題だって、単純に正義と悪とには分けられないことがあるかもしれません。
 
 大切なことは、「その行為は、誰かの自由を侵害するものであったのか」という点です。

 何が正しく、何が正しくないことなのかを裁くことよりも、
 生徒一人一人の「自由」が損なわれたかどうかを見極めましょう。

 例えば「メールですぐ返事をよこさなかったのがいけない」という考えがあります。
 返事を返すか否かは受け取った側の自由ですから、
 明らかな自由権の侵害と判定し、躊躇無くライダーキックを放っても良いと思います。

 ライダーキックは比喩ですよ……本当にやったらアウトだよ。

 また、生徒が、今時のプロ市民でも言わない、青臭い「宿題をやらない自由」を主張したら、
 にっこりそれを認めると同時に
 「平等の原則に基づきやった者とやらない者とを同等に評価することはできない。そして公平・公正に評価するのは学校の義務だ。」
とはっきり言ってやりましょう。

  *1) 民法第一条
      1 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
      2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
      3 権利の濫用は、これを許さない。
  *2) スタッフのこだわり
 平山は「労働者の味方として作った」とも言っているそうです。そういえば悪の秘密組織はいかにも会社組織になっていますね。中間管理職もいるし……。ブラックな職場に仮面ライダーやってこないかなぁ。
  *3) 平成ライダー三部作
 「仮面ライダークウガ」はものの考え方も言語も異なる意思疎通ができない相手と、「アギト」は人類の創造主と、「龍騎」至っては仮面ライダー同士が戦いました。