十種神宝 中学国語の基礎・基本

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○○と敬語は使いよう……フリーザ様とご老公に学ぼう

   2007年に文化審議会が「敬語についての指針」をまとめました。
 「時代とともに変化する敬語の使い方に目を向け、コンビニやレストランなどで広まっている『マニュアル敬語』などにも言及、画一的な使い方に警鐘を鳴らした」と言われています。

○○と敬語は使いよう

 使い方によって、さまざまな印象を相手に与えることができます。
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©鳥山明/集英社
 『ドラゴンボール』シリーズに登場するフリーザは、基本、部下に対しても敬語を使います。
 プライドが高く、戦闘も強いキャラクターが敬語を使うと、余計に怖さを感じますね。
 自分はあなたより圧倒的に強いが自制して接しています」という強烈なメッセージです。
 インテリヤ○ザと同じ用法です。

 ですから、物語の場面によって急に敬語を使わなくなることがありますが、この表現の変化によって「フリーザが本気になった」ことがより強調されます。

 敬語を使っているときは、まだフリーザに余裕があり自制していることを示しているのです。
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 これを更に進化させたのが『水戸黄門』の定番キメ台詞です。
  • 「え~い、控えおろう。このお方をどなたと心得る。恐れ多くも前の副将軍 水戸光圀公にあらせられるぞ。ご老公の御前である。頭が高い……控えおろう。」
 相手に対しては尊敬語自分や自分の身内に対しては謙譲語を用いるのが敬語の使い方の基本です。
 しかし、助さん格さんは、「どなた」「あらせられる」の尊敬語を身内の年寄りに、「おろう」「心得る」という謙譲語は相手である御家老等に用いています。

 まさに敬語によって力の差を相手に思い知らせ、土下座せざるを得ない状態に追い込んでいることがわかります。(それ以前に、悪いやつはボコボコにされているんだけどね。)

 先の「指針」によれば、敬語には「相互尊重」と「自己表現」の二つがあるとされています。
 フリーザ様の場合もご老公の場合も、相互尊重などではなく、強烈な自己主張ですね。

 生徒と先生との間での使い方を考えてみましょう。

 例えば、先生が“黒”と言っていることを、生徒が“白”だと思ったとします。

 「先生、それは黒じゃなくて白なんじゃない?」とは、なかなか言いづらいでしょう。
 しかし、「先生、黒ではなくて白ではないですか?」なら、少しは言いやすくなるのではないでしょうか。

 敬語とは「話し手による対人関係のわきまえ、特に敬意・へりくだりなどの気持ちを表す言葉遣い」(『岩波国語辞典』第六版)とされています。
 この特徴を生かして敬語を使うことで、目上の人に対して対等にモノを言えるようになる、という自己主張の機能があることを忘れてはいけません。

 敬語というオブラートで中身をくるむことで(あくまでも敬意を払いながら)内容的には対等に会話する…それが敬語の大きな特徴なのではないかと思います。

 敬語を使えない生徒が増えた、ということは、きちんと自分の考えを言いたくても、人間関係を考えてしまって、自分をうまく相手に伝える技術がない生徒が増えた、ということがあるのかもしれません。

 これは生徒と先生の間でも、生徒同士でも同じことです。

 自分の考えをストレートに伝えようとすると、相手を傷つけるかもしれない……
 かと言って、うまく伝える方法が身に付いていない……
 そこで、ついつい表面的な会話しかすることができない。
 相手の顔が見えないLINE等のSNSならなんとか表現できるが……
 (しかも表現力不足のため、意思疎通がうまくいかないのが現状のようですが……。)

 ならば私たちは、子どもに日常接する大人として、または、教職員として、どのような言葉遣いを手本として示し、どのように伝えていくべきなのでしょうか……。

 先生と生徒は、いろんな意味で対等な存在にはなれません。
 対等であろうとして、または、親しみを表現しようとして、
 生徒に対し「ため口」で話しかけても
 生徒は、あなたに心を開き、本音を語ろうとするでしょうか。
 
 安易な言葉遣いは、注意すべきでしょう。
 みなさんの、生徒に対する言葉遣い、教員同士の言葉遣いを、生徒は見ています。